これが私の書きたいこと! 失いながら生きる(9)

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失いながら生きる(9)

  入院すると患者はひとまず安心する。それはかいがいしく面倒を見てあげようとしてくれるナースがいるからではなく、自分を苦しめている日常という空間から解放されるからである。
 しかし入院するということは自分の身の周りのものと、ベッド以外は「自分のもの」と呼べるものは何一つない。テレビや喫煙ルームの使用時間は厳密に守られており、自由に使えるものはトイレと水道くらいだろうか・・・。だがそれとて他の患者との共用であり、我が家のものと同じ気安さで使えるわけではない。それでも、同じように精神に病を持っている人達といると、シャバでは味わえない安心感があるのは確かである。

 自分はインド文化の宗教観に共鳴しているので、ヒンズー教徒と呼ばれても何も不快はない、いやそれどころか、日本にいながらヒンズー教徒として認めてもらえることは喜びの一つでさえある。インドという国は非常に懐の深い国であると同時に人々の懐は考えられないほどに寂しい。非常に長い歴史と、貴重な文献などが発掘されずに随所に埋まっているという。その中にはNHKでも取り上げられたインドの国立図書館に秘蔵されている聖者ヴァラドワージャの個人に関する預言書などもインドならではのシロモノと言っていいのではなかろうか・・・。

 もうかれこれ20年以上になるであろうか、ヒンズー教関係の在日インド人や日本人団体が主宰しているヒンズー関係者などと、自分は少なからず接触を保っている。実はその「ヴァラドワージャの預言書」なるものをテレビが取り上げる前にインドから持ち帰ったというその預言書を見せてもらったことがある。
 
かの書物を日本に持ち込んだ人物は、青山氏の紹介によると、日本に生まれながらインドで僧侶になっているという稀有な背景の持ち主で、おつむのできもよく、インド人ですら読めるものは殆どいない梵字が読めるため、彼は「Ha?」と思わず漏らしてしまうような古文書などを山のように持っている。
 その彼が来日したときに、精神世界関係者の集まりが、行われており、招かれて来ていた彼が古文書を読んでいたら、何やら個人の名前とその人の今生での運命とおぼしきものが書いてあるのを発見したから、今から呼ぶ人がここにいたら手を上げてくださいと非常に気安い声で言った。どうやらその預言書に出てくる人物というのは旧姓で書いてあったり、アルファべトだけのようだった。いきなり「SAKURAI・K」と呼ばれ一瞬ギクっとしてしまった。
 勿論、自分のことが書いてないかなあ・・・と心の奥底で考えていたので、自分のことの可能性がないわけではなかろう。もし間違っていたら「あ、違いますね」で済むので、思いっきり息追って「はい!」と答えた。インドで聖者の中の聖者・ヴァラドワージャが数千年前に梵字で自分の人生の詳細を書いてくれているのなら是が非でも読んでもらいたいという強烈な衝動がほとばしった。

 「あなたはSAKURAI・Kさんですか?」その僧侶は、日本からインドに帰化した不思議な運命をもっている上に、誕生日だけを告げれば子供の数や、旦那の情報、困っている悩み事などを矢継ぎ早にまくしたてることができるという人物なので、自分は勢いよく前に進み出たものの、同じ場所にいる人に聞かれては困るようなことを単刀直入にこの男がしゃべり出すのではないかという不安を一瞬覚えた。もともとインドには「シヴァ神の預言書」「プリグの預言書」「シャーストリーの葉」「アガスティアの葉」など、個人の人生の預言書があるのは知っていた。
 実際に「アガスティアの葉」という書籍がベストセラーになってから、大勢の精神世界関係者がインドはカンチプラムに流れ込んだ。
 本を書いた青山氏は電話もない山奥まで探しに行って、かの「アガスティアの葉」の館に遭遇したという風に書いていたが、精神世界関係者がその町に到着すると、あたり一面に「アガスティアの館」が当たり前のように並んでおり、いいカモの日本人が来たとばかりに、ホウガクなお金を取られ、どこも「うちが本家だ」と言って宣伝していたらしい。
 
 インド人はウソをつくことに関して無頓着に見える。自分が知っている日本人は殆どだまされて、偽物を掴まされ、「憤懣やるかたなし」とでも言いたげな面魂でもって帰国してきた。
 自分の友人は10年以上、インド占星術をマハリシ研究所で学んでいたので、青山氏とも交流があるようで、早速友人もカンチプラムまで飛んだ。
 帰国後、結果を訊いたら「3軒ぐらい行ってみたけど、あれはまがい物だよ。僕が知っている自分のインド占星術のリーディング結果くらいの情報しか話してくれなかった。まあシヴァ・スワミのところぐらいかな、満足したわけじゃないけど人柄はよかったよ」「じゃあ青山さんが読んでもらったものは・・・?」「彼の行ったところには本物があったんだろうね・・・」――――自分はこれを聞いてからは、お金の無駄であろうと思って、自分の人生とやらを書き残してあるという葉を探しに行くのを見合わせていた。
 青山氏も「あれはジャンルとしては小説でしかないから・・・」と遠まわしに、完全なノンフィクションではないと言っているのを後で人づてに聞いたことも無関係ではなかった。
 
 かの帰化した日系インド人僧侶は、多少せっかちだったが、非常に礼儀正しくて、私に関する部分のリーディングに入った。しかし、自分の人生に関する部分はかなり長いので、今日は時間が無いので少しだけしか読めませんと言われ、少しがっかりした。

 初っ端からいきなり「あなたの目の前にいる女性は今生で解脱する方なので、その御足にひれ伏せと書いてありますねぇ」と告げたかと思うと、彼は形ばかりに頭を下げただけで、ひれ伏すという表現とは、あまりにもかけ離れたものだった。
 別に念入りに畳に額をこすり付けろ――――――などと言う気は毛頭なかったが、読んでいる本人が上の空であったような感じがして、ちょっと胡散臭い感じがした。
 それを聞いて自分は素直に喜んで見せたが、かの僧侶は

 「私は地球の最後の一人が解脱するまで何回も何回も再生するつもりです」

 と言い放った。それを聞いて、自らの狭量さについて、いくばくか気恥ずかしい思いはしたが、自分は既に十分ボランティアはやってきたつもりなので、ここいらで勘弁してほしいという思いが強かった。ノーモアー、エニィモアーの心境だったと思う。

「お嬢さんはあなた方に死ぬほど金を使わせますよ。」
 
「それがあなた方のキャパを100とすると、お嬢さんにかかるお金はいつも
 99・・・だから出してしまうんですよ。101にはなりませんから。
 だから続くんです」

「お嬢さんのやっておられる稽古事は何か、私は分かっています。コンクールに
 でも出してもらえればねぇ・・・」

「お嬢さんはいずれ、世に出ます。それが今やっていることとは限りません、
 音楽関係もしくは言語関係かもしれません」

「息子さんは非常に慎重な魂の持ち主です。名前を呼ぶときには”R”の発音を
 強調すると、息子さんは高い社会的地位を持てるようになりますよ。それに銀でできた
 ブレスレットをつけさせると、ご壮健にあらせられるでしょうと書いてあります」
 
「あなたはマハーダーシャがラフーの影響下にあるときはかなり厳しい試練を受けることにになるでしょう。
 それを緩和するために、今度インドに行かれるときにゴメーダの指輪を買ってきてください。」

「息子さんは学者か医者になりますよ」

「息子さんはどんな危険な目にあっても安全な場所にいます。怪我や病気は心配ないです」

「あなたはヴィヴェーカナンダを知ってますか?」
「あなたはスワミ・ヴィヴェーカーナンダの最後の直弟子だったようですね・・・」 
 
 自分は家に帰る道すがら、いろんなことを考えていた。
 
 勿論そのときは、うつ病の気配など全くない社交的な自分だったけれど、軽いパニックに襲われた。娘に費やされるであろうバレエ関係の経費が給料の大半を持っていくんだったら一日でも早く仕事を見つけなければ・・・下に男の子がいるんだから、これ以上息子のことを蔑ろにしてはいけないと思った。
 そして眩暈さえ感じたヴィヴェーカナンダの最後の直弟子の件・・・。
 「ありえない」と理性は叫んでいたが、一瞬ではあるけれど、選民意識が煽られたのも事実である。やっぱり自分にはヴィヴェーカナンダしかいないと一人悦に入った。

 東京にいた頃は週に1度ヒンズー教関係者の集まりに参加して、バジャン(賛美歌)を歌って瞑想して、気の合うご婦人方と喫茶店に寄っては色んな人の神秘体験を聞いたり、贔屓にしている聖者のことをおしゃべりして帰るという生活をしていた。
 勿論、家でもできる限り瞑想の練習をした。

 まだ幼い子供達に光明瞑想をさせたりすると、目を閉じたまま4歳の娘は

 「うわ~お母さん、まぶしいよ。色んな色の光がおでこの辺りでピカピカしてるよ~」

 と無邪気に喜んでいた。

 子供は心が清らかだから神秘的な映像が見えたりするんだろうなあ。羨ましい・・・。
 そんな風に一日が終わっていった。とても充実感の在る毎日だったような気がする。

 でも故郷に帰ってきても、こうやって不思議な日系インド人僧侶と接触する機会はあるし、インドにも行こうと思えばいつでも行ける。でも、定期的に毎週毎週インドに感化された日本人や東京に住んでいるインド人が一緒に、日本に帰化した大金持ちの宝石商である元インド人の豪華な邸宅に集まって、色んな宗教の教祖様を同列に並べてある祭壇の前で胡坐をかき、瞑想の真似事をしたり、ハーモニュームやタブラにあわせてヒンズー語や日本語でバジャンを歌ったりマントラを唱えたりすることはできなくなっていた。
 故郷帰ってきたことで、この環境や精神世界系の友人、添削指導員という仕事の全てを取り上げられたのは流石に今でもこたえていると思う。
 自分は知らない間に、うつ病への階段を登り始めていたのかもしれない。


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Re: No title

石英さま
コメントに気づくのが遅くなって申し訳ありません。
そうです。星野さんです。
気づくのが遅れて申し訳ありません


> 僧侶の方のお名前は、星野さんですね?

Re: 教えてください

こんにちわ
そうです。Hさんです。正体不明なお方です。
Hさんの携帯はとってくれないんで、ヴァラドワージャの預言書


> こんにちは。
>
> 僧侶の名前は「H」さんですか?
>
> 私も自分のヴァラドワージャの預言書を探したいのですが、可能でしょうか?
>
> 失礼がありましたら、すみません。お返事はメールでいただけると助かります。
>
> よろしくお願いします。

Re: 教えてください

こんにちわ
そうです。Hさんです。正体不明なお方です。
Hさんの携帯はなかなかとってくれないんで、ヴァラドワージャの預言書を読むのは
不可能だと思っています。
私もほんの一部しか読んでもらってません。
メールでお返事しようとトライしましたが、サーバーの都合でできなかったのでここに書きました。
星野さんと連絡取れたら連絡しますね。
コメントありがとうございました。お返事が遅くなってすみません。


> こんにちは。
>
> 僧侶の名前は「H」さんですか?
>
> 私も自分のヴァラドワージャの預言書を探したいのですが、可能でしょうか?
>
> 失礼がありましたら、すみません。お返事はメールでいただけると助かります。
>
> よろしくお願いします。

No title

http://ameblo.jp/wasodo/entry-10913286016.html

お返事ありがとうございます。残念ですが星野さんは、すでに亡くなられています。

Re: No title

石英さま

そうだったんだ。知りませんでした。かなり太めな方だったんで、成人病かな?

> http://ameblo.jp/wasodo/entry-10913286016.html
>
> お返事ありがとうございます。残念ですが星野さんは、すでに亡くなられています。

No title

いろいろ教えていただきまして、ありがとうございます。

すみませんが、もう少し教えてください。

星野様のお名前、どこの寺院の方か、など、何か預言書を探す手がかりになるような情報を教えてください。

よろしくお願いいたします。

No title

ヴァラドワージャの預言書の英語表記をご存じでしたらお教えください。
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